その2からの続きです。
擁壁の残存区間を下流へ向けて進みます。
しばらくは足元に不安なく歩けそうです。
路面部分は本来舗装されていたはずなのですが、流失したのか土砂が堆積しているのか分かりませんが草木が繁茂しているので、擁壁のコンクリート上を進みます。
トラックが一台取り残されていました。
訪問した時期は冬枯れの時期だったのですぐに気づきましたが、周囲は草木に覆われているので、夏場のように葉が生い茂る季節に訪問していたら、隠れて気づかなかったかもしれません。
前後を崩落に遮られ、身動きの取れないまま15年近い歳月を、人の往来もないこの場所で孤独に過ごしていると思うと、トラックにも憐憫の情が湧いてきます。
わずかに顔を覗かせるトラック。
トラックのある辺りから下流側は路盤が削られており、擁壁だけが残された状態になっています。
時折深めの陥没も見られますが、中間の陥没部分の土砂はどうやって失われたのでしょうか。
そして擁壁が残存する区間も残り僅かになってきたようです。
皮肉にも法面工の部分だけが頑強に残存し、路盤より下の部分が全て失われています。
そんな光景を見つめていると、左手の斜面からガサガサという物音がしました。
ハッと我に返ってみると、視界の隅に黒い物体が動いているのが認識できました。まさか…。
周囲の現道には「熊出没注意」という看板も立てられていたので、身も凍る思いで音のした方角に目をやると……。
シカでした。
ほっと一安心。お互い牽制し合うかのように、しばしの間見つめ合いが続きました。
カモシカだと思いますが、見慣れた灰褐色ではなくかなり黒い個体だったので一瞬熊と見間違え、肝を冷やしました。
気を取り直して残存する擁壁の端部へ進んでみます。
木製の朽ちた梯子が放置されていました。
端部から崩壊部を臨みます。
ここは擁壁自体は面影を残していますが、地すべりを起こしたように沈み込んでいます。
下へ降りて上の写真を撮影した箇所を振り返ります。
ちょうど継ぎ目の部分から破断したようです。
地すべりを起こした斜面はもともと盛土だったためか、地盤は安定しておらず、非常に脆いように見受けられます。
見上げてみると、法面工が辛うじてその状態を保っています。
今後何年も風雨に晒されれば、下部の土砂が流失してやがて崩壊してしまうのでしょう。
傾斜した擁壁に一歩踏み出してみましたが、そのまま急流に滑り落ちそうになってので慎重に引き返しました。
さらに先へ進むと、残存している擁壁の状態がどんどん悪くなってきました。
それまで一枚板の状態を辛うじて保っていましたが、最終的にはやはりバラバラに破壊が進んでしまっています。
水抜きパイプが本来はありえない天に向かって口をあけています。
改めて来た道を振り返ると、下流に進むにしたがってひどい崩壊が発生していることが分かります。
最終的には、前回のアラと似たような、現状を留めないほどの崩落になっていました。
前方に平場が見えてきました。法面とガードレール、擁壁が今までと比べて状態よく残っているように見えます。
最初の数十メートル以来、久しぶりに道らしさを感じさせる光景です。
それでも所々でガードレールが垂れ下がり、やはりいくらかの崩れは生じているようですが…。
次回へ続きます。
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