青森県平川市、秋田県との県境矢立峠のそばにある湯ノ沢温泉郷。
手前から、でわの湯「湯ノ沢山荘」、「なりや温泉」、「秋元温泉」という個性溢れる泉質の一軒宿が点在していましたが、でわの湯が2008年、なりや温泉が2011年にそれぞれ廃業し、最後まで残った最奥の秋元温泉も去る2012年9月末で開湯400年の歴史に幕を閉じ、湯ノ沢温泉郷は過去の歴史となってしまいました。
沢を遡ったどんづまりの一軒宿。携帯電話の電波も、地上波デジタル放送も受信できません。
宿の裏手には小川が流れ、せせらぎの音が静かに響いています。
宿の対岸は崩落が進むガレ場になっており、温泉成分が析出しておりちょっとした地獄のような景観です。
今にも崩れそうな場所にちらりと屋根を覗かせているのが薬師堂。
宿の裏口から、崩れかけた参道を登っていきます。砂利で滑りそうになるので結構怖い。
立派な薬師堂。不覚にも内部の写真を撮っていませんでした。
というか、どうもお堂の中にカメラを向けるというのが、罰が当たるような気がして私には憚られるのです…。
立派な扁額は弘前市のタンス店が1967年に奉納したもの。
信仰の篤い湯治客の方だったのでしょうか。
そして傍らには地蔵堂も。
秋元温泉の湯は、翡翠のような緑色の含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。硫化水素臭とアンモニア臭の混ざったような強烈な臭い。
そして塩化物泉だけに、飲泉すると塩苦いこれまた強烈な味わい。
いかにも薬湯という感じの「効く」お湯でした。
成分が濃いので長湯すると湯あたり必至…。
こんな素晴らしい温泉も、今となっては入ることができません。
温泉亡きあと、薬師堂はどうなってしまうのでしょうか…。