栃木県は大谷石の産地だけに、道を走っていても蔵や商店など、多くの大谷石で建造された建物を見ることができます。
宇都宮市の中心部にある東武鉄道宇都宮駅から一駅の南宇都宮駅も、そんな大谷石を用いた建築物の一つです。
東武宇都宮駅は百貨店併設の大きな建物なのでそれなりの規模の路線かと思ったら、単線で日中は30分間隔で運転されている長閑な路線でしたよ宇都宮線。
建物は一階部分が大谷石を用いており、二階部分はコンクリートかモルタルと思われます。
まずは入り口。両脇は円柱状に細工がされています。
事務室の窓は洋風な縦長のデザイン。軒を支える持ち送りの意匠も凝っています。
待合室側の軒。手前の飲料自動販売機がちょっと邪魔ですが、三段の曲線を描く持ち送りの連続がアクセントになっています。
屋根の軒先は波状の模様がつけられています。丁寧な施工で、かなり手間が掛かったのではないかと思われます。
内部。小さな駅ですが有人窓口があり、駅員さんが常駐しています。
そして建物に似合わず改札口には簡易型のICカードリーダーが設けられています。ベンチは座面が木製。
天井には飾り窓のようなものが。格子の向こうに天井裏が覗いているようですが、もともとは照明にでも利用されていたのでしょうか。
今度は改札をこえてホーム側から。
方杖は表側の持ち送りに比べると簡素ですが、縦桟が入るなど意匠にはやはりこだわりが見られます。
ホームから駅舎を眺めます。軒の波模様や二階部分の嵌め殺された窓の両脇のギザギザ模様が午後の陽光を浴びてひときわ美しく感じられます。
架線柱に駅名標が。そして松坂屋の広告も。
ホームの側壁も大谷石。
駅本屋に隣接した古風な駅便(駅便所)。木造のこぢんまりとした便所建築はいつ見ても心が和みます。日本木造建築のエッセンスが、狭い空間にぎゅっと凝縮されています。
しかし内部はきちんと整備されており、バリアフリー用の手摺や水洗便器が完備されています。
駅の周囲には宅地がひろがるだけで、これといった特徴のない地元密着の駅ながら、駅舎は大変見ごたえのあるものでした。
なお、駅前はプチ田園調布のように放射状に街区が整備されています。
場所はこちら。