前回ご紹介した「大町の隧道」から程近く、路地を入った先に「五岳荘隧道」はあります。
「山さ行がねが」でもレポートされているので隧道愛好家にはかなり知られた存在ではないでしょうか。
前回も記した通り、私は幼少の頃この周辺に住んでいたことがあるので、この隧道の事もとても印象に残っています。
現在では手前の敷地が造成されていますが、かつては薄暗い雑木林の奥に不気味に口を開けており、まだ幼かった私は怖くて中に入ることができませんでした。
恐る恐る遠巻きに隧道の内部を覗くと、薄ぼんやりと光っていて、奥には階段のようなものが見え、三輪車か何かが放置されていた記憶があります。
その後、この程度の隧道など怖がらない年齢になった頃には既に興味を失っており、そういえばそんなものがあったな…という程度で結局写真を撮ったり中を探検しなかったのが今更悔やまれます。
当時の記憶に焼きついていた階段のようなものは、多分「山さ行がねが」のレポート後編に出てくる支坑を埋め戻した石積みを見間違えていたのだと思います。
そんな思い出のある五岳荘隧道。
手前は造成されたものの特に何かに使われているというわけでもなく、個性的で味わい深い坑門は非常によく観察することができます。
扁額にも風格が感じられます。
隣には新道となる隧道が口を開けています。
こちらは装飾もなく、素掘りにコンクリート吹き付けを行っただけの簡素な佇まい。
傍らには「私道 行き止まり」という手製の看板が置かれているのが微笑ましいですね。
反対側の坑口。
洞内はO型滑り止め付きのコンクリート舗装です。
そしてこの坑口の隣に、五岳荘隧道の坑口が口をあけており、表側は閉塞していても以前は裏口から内部に入ることができたのですが…。
いやな予感。
宅地造成が行われ、五岳荘隧道の坑口は擁壁の向こう側に完全に埋められてしまい、もはや見る影もありません。
大変残念……。
願わくば、せめてこの美しい坑門たけでも、末永く残され続けて欲しいものです。
[追記]
図書館で資料を調べていたら、この隧道についてのエピソードが見つかりましたので別途ご紹介しています。
場所はこちら。