静岡県道60号 大網トンネル廃道 その1

静岡県道60号南アルプス公園線は、大井川の奥部、畑薙第一ダムと国道362号藁科街道の昼居渡との間を結ぶ全長74.3kmの路線です。
全線の大半部分が狭い山道で、特に南部はあまり整備が進んでいないため車両の通行も少ないのですが、北部は静岡市街と井川地区を結ぶ重要なルートとして活用されています。

そして井川から畑薙までの区間は、南アルプス赤石温泉白樺荘や畑薙第一ダム、またその先の南アルプスへの登山客などが多く利用するものの、地質の弱い地帯を通ることから落石が多くみられ、決して状態の良い路線とはいえません。

井川から畑薙第一ダムまでの道のりにはトンネルが数本あり、南から田代第一トンネル、田代第二トンネルの順に、畑薙第二ダム脇の田代第七トンネルまで連番で命名されています。
いずれも車幅が狭く、側壁が馬蹄形でなく垂直になっている、ダム道路によくある断面の古めかしいトンネルです。

そんな中にあって、最後の集落田代を過ぎて3キロほど走り、田代第六トンネルを過ぎると突然それまでの狭い車幅が一変し、高規格のトンネルが口をあけています。

これが大網トンネルです。
長さ528m。二車線+歩道の立派な隧道で、坑門は今風のコンクリートに絵が描かれたタイプです。

詳しい経緯は調べきれていないのですが、連番で振られているトンネル群の間に割り込んだ新しいトンネル、しかも地盤の弱い過酷な環境…というと、なんとなく察しがつきますね。

という訳で、南側坑口右手にある廃道区間へと進んでみます。

落葉などでかなり舗装の見える幅が狭くなってはいますが、比較的状態の良い道が続きます。
とはいえ小規模の落石は随所で発生しており、巨大な岩塊が路肩に横たわっている場所もありました。
しかし、その程度であれば現役の県道60号も環境としては似たようなもので、共用されていて定期的にメンテナンスがされて落石が除去されているか、そうでないかの違いだけ、というのが実情なのです。

そんなこんなで、しばらくは快適な(?)廃道区間が続きます。歩きやすくて気持ちの良い道なのですが、いつ落石が襲ってくるか分からないのでちょっと怖いですね。

カーブ区間は幅員が広く取られており、日当たりもよくなっています。

カーブの先では、シイタケ栽培のホダ木らしきものがカードレールや路肩に立てかけられていました。
だれか利用している人がいるのでしょうか。そういえば途中でハニーボックスもいくつか見かけた記憶が。

さらにしばらく進むといやな予感。舗装が見えなくなり、緑に行く手を阻まれます。
いよいよ廃道の本領発揮といったところでしょうか…。

草木を掻き分けつつさらに進むと、いやな予感がマックスに。
やたらと眺望が開けているのですが(涙)

…。

ごっそりやられています。

上部にはアンカーがたっぷり打ち込まれ、崩落エリアはかなり下のほうまでコンクリートが吹き付けられています。

それにしてもものすごい高低差。地形図から読み取ると80mくらいはあるようです。
路盤などというものはきれいさっぱり失われています。

災害復旧とはいえ、よくぞこんなところで吹き付け作業をしたものです。

絶景。
というか、ちょっとよろめいたら谷底です。油断は禁物です。

吹付のところどころに、コンクリート鍾乳石が育ちつつありました。
落石の衝撃か、方々で吹付が破壊されて地山が露出していました。

そしてよく見えませんが傍らには鹿の糞。

アンカーを埋めたとはいえ、そんなものはお構いなしに崩落は続いているようで、頂点部分はかなりの石が堆積しています。
足場が悪いので、一歩一歩慎重に踏破します。滑ったら100m下の大井川へ真っ逆さまに転落です。

最上部付近から。
下の方にガードレールが見えていますが、これだけの高さを高巻きして迂回せねば通り抜けができません。
崩落発生時には、かなりの規模だったことがうかがえます。コンクリート吹付部分を頼りに下りながら路盤へと戻ります。

振り返って。
吹付部分の上にいやというほど落石が堆積しているのが分かります。あきらめてトンネルに付け替えるのも当然でしょう。

鹿の角が落ちていました。
多数の糞が見られるので、鹿たちは現役道路として活用しているのでしょうかね。

ようやく路盤に復帰。やれやれ。

…と思ったところで、またもや路盤をすべて多い尽くす落石覆い。

この地の環境の苛酷さが良くわかりますね…。

長くなったので続きは次回。

 

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