前回ご紹介した「島古隧道」から、国道418号をほんの数分南下すると、快適な二車線で遠山川を渡る橋の傍らに、二連のコンクリートアーチ橋が見えてきます。
これが月之島橋です。
現道と橋との間にはずいぶんと高低差があります。
現道がかなり盛られているのか、あるいは橋が現役のころから橋梁部分だけ下がっていたのかは分かりませんが…。
ともあれ比較的急な勾配の旧道を橋へ向かって下りてみましょう。
枯枝に遮られて全体がきれいに見えませんが、なかなか味わい深い二連のアーチ橋です。
入り口はガードレール製のゲートで塞がれており、車両は通行できません。
もっともガードがなくともこの先へ車がすすむことはできないのですが…。
橋の反対側は新道に阻まれ、階段になっているのです。
そこまでしてこの橋を残すほど歩行者による通行があるとも思えないのですが、土木的価値が認められてのことなのでしょうか。
はたまた頑強なコンクリート橋ゆえ撤去費用が嵩むから放置されているのか…。
アーチリブと比べるとほっそりした印象の横桁。
このアーチ結合部のなだらかな曲線とかたまりませんね。美しい。
ジョイント部。
振り返って。
やっぱり下路式RCアーチはいいですね。コンクリートであるにもかかわらず、柔らかさというか、優しさのようなものを感じます。
恒例の親柱チェック。まずは左岸上流側より。
「月之島橋」。
続いて左岸下流側。
「昭和二十七年三月三十一日竣工」の銘板の傍らに、控えめに「施工 株式會社熊谷組」の銘板も。
続いて右岸上流側は「つきのしまはし」。
最後に右岸下流部は「遠山川」。いずれの親柱もかなり太く、アーチリブともバランスの取れた頑強なデザインです。
現道から見下ろす格好で。
このように橋のすぐ袂から階段になっているので、歩行者以外には大変通りづらい構造になってしまっています。
肝心の歩行者も、現道の交通量が多いわけでもないのに果たしてわざわざこの階段を下りて橋を渡り、対岸の坂道を登ろうと思うものかどうか。
現道はカーブを描くシンプルな桁橋。
橋桁が月之島橋よりかなり高い位置に設けられているのは、やはり水害を意識してのことでしょうか。
その現道からは、月之島橋のようすを俯瞰気味にじっくり観察できます。
こうしてみると分かるのですが、私は最初この橋も長野県に多く見られるコンクリートローゼ橋かと思い込んでいたのですが、よく見るとアーチリブに比して床板が薄く、ローゼ形式ではなくタイドアーチ形式であることがわかります。
やはり結合部分の曲線は何度見ても心が和みます。
場所はこちら。