諏訪湖を源流とし、広大な河岸段丘を形成しながら伊那谷を下り、その後長野・静岡・愛知の各県が境を接する山岳地帯を抜けて遠州灘へと流れる天竜川。
その天竜川のなかでも急峻な地形を形成する地帯に位置する浜松市天竜区に、ひっそりと佇む吊り橋があります。秋葉橋です。
アプローチは国道152号横山トンネル北側坑口から。
坑口の傍らで旧道が分岐していますが、その分岐点からすぐのところから更に分かれる枝道が、秋葉橋へ通じています。
狭いながらも舗装されており、轍もあるのですが、50cc以下の自動二輪車を除く自動車の通行止を示す標識が立てられています。
緩やかな下り坂を進んでゆくと、トラス構造の立派な塔が見えてきました。
秋葉橋の主塔です。門型鉄塔のような、かなりがっしりした造りです。
左右それぞれ5本ずつの主索が森の中へ消えてゆきます。アンカーまでは探索しなかったので、写真はありません…。
入り口部分。低い位置に横桁(?)が設けられ、三種の標識が並べて表示されています。
さきほど入口周辺にもあった、「50cc以下を除く自動車の通行禁止」のほかに、制限速度20km、高さ制限2.0m。
橋長は200mほど。こちらの右岸側は森に囲まれて日照条件が良くないためか、床版がやや苔むしています。
欄干がわりの金網には、河川許可票が掲示されていました。
占用期間が定められているので、都度更新されているようです。
右岸側の森の中の区間は、床版の状態があまりよくなく、一部には腐食している箇所もありました。
歩いているとちょっとフカフカになっているところも。
中間部分は床版の交換が行われたようで、真新しい床材が明るく目に映えます。
対岸まで続く細く長い道。この橋は天竜川に架橋された吊橋の中では最も長いそうです。
上流側の眺め。天竜川はこの橋の周辺では大きく蛇行しており、左岸側は険しい断崖になっています。
左岸側主塔。やはりがっしりとした印象です。
振り返って。
もともとは自動車の通行もできたようなのですが、幅員は目測で2.5m程度なので、実際に車両が通行したときに歩行者がいたら、金網の欄干があるとはいえ避けるのも怖い感じです。
対岸の県道には味わい深いコンクリート坑門の隧道が見えました。後でのぞいてみましょう。
左岸側の入り口。
右岸側同様三つの標識が掲げられているほか、県道の制限標識やカーブミラー、バス停、など賑やかな印象です。
対岸の県道286号は制限30km、センターラインは無いものの、それなりの幅員のがあり、撮影中に何台もの車が行き交っていたので、そこそこ利用されている道のようです。
橋の正面には道標と石垣がお出迎え。
そしてこの吊橋の最大の特徴が補剛桁の構造。
非常に珍しい三弦トラスなのです。同様に三弦トラス補剛桁を持つ吊橋としては、同じく静岡県内の大井川に掛かる井川大橋があり、そちらの方が橋長・幅員などの規模は大きいようですが、基本的には兄弟橋のようにとてもよく似ています。
銘板などが見当たらず、建造年や建造業者なだの詳細情報が分からないのが残念です。文献等を調べないといけませんね…。
橋台から補剛桁を観察。下流側から。
続いて上流側。
それでは県道の隧道にもちょっと寄り道。
コンクリート造の味気ない坑門ですが、個人的には苔むしたこういう坑門に、煉瓦造とはまた異なった風情と趣を感じます。
隧道の内部から。カーブの先に主塔が見える、土木構造物が好きな私にとってはとても心躍る光景。
狭い崖地を這うように走る県道と川との間のわずかなスペースに屹立する主塔の迫力たるや。
右岸側に戻ります。
橋の右側に川床へ下りる道がついていたので補剛桁の中へ回りこんでみました。橋台から三節ほどは下弦材が土に埋もれていました。
延々と続く三角形の空間。
凝視していると奥へと吸い込まれそうな錯覚さえ覚えます。
撮影していると、ちょうど日が射し込んできました。
両側の竹林とのコントラストが素晴らしく、まるで三弦橋が宙に浮かぶ艦船のように見える、不思議な雰囲気の写真が撮れました。
下から見上げて。
新緑とリベットの対照。
川へ下りて全体を。
残念ながら右岸側は半分近く森の中にあるので、主径間全体を見渡すことはできません。
左岸側の主塔をズームで。
山肌にへばりつくように立つさまがよく分かります。
最後に直下から見上げた橋の姿を。
主塔と主索、補剛桁、耐風索が重なった力強い光景です。
場所はこちら。