JR東日本 中央本線茅野駅は、白樺湖や蓼科への観光拠点として賑わう比較的規模の大きな駅です。
そしてその新宿方に、ちょっと古めかしい鉄製の跨線橋があります。
あざやかな青色でとても良く目立ちます。
トラス橋梁に詳しい方であれば一目でわかるかと思いますが、トラス構造が網目のようなラティストラスになっています。
袂には、「跨線人道橋」という洒落た案内看板が建てられていました。
案内によると、このラティス桁は関西本線の仮橋を移設したものと考えられているそうです。橋脚は古レールの流用です。
1931(昭和6)年4月完成とのことで、実に80年以上もの間、茅野駅の東西を結ぶ生活路として活用されているのです。
まずは東側から。こちらの階段はL字型に屈曲しています。
トラス桁ではない部分が数メートルほどあります。
案内板に記述があるとおり、当初は橋はトラス桁部分だけでしたが、その後この部分に諏訪鉄山鉄道の専用線が敷設されたために延長されたようです。
そう考えると、東側の上り口がL字型に屈曲しているのは、この延長で階段が直線のままだと歩道敷地が足らなくなってしまうため、歩道を確保できるようにするための措置だったのでは…と想像してみたり。
建造当時の状態がわからず実際には最初からL字型だったかもしれないので、根拠のない大変無責任な想像ですが…。
上部へとやってきました。
円弧を描く桁はやや低めで、それだけでは転落の危険があるため桁上部に欄干が増設されたようです。
網目状の美しい桁。
ちょうど電車がやってきたので桁とツーショットを。
中央本線、篠ノ井線のこの周辺でも、昔ながらの国鉄型の車両はすっかり見かけなくなってしまいました。
桁上部のRとトラスの網目の絶妙な取り合わせに、しばし目を奪われます。
架線の上部には、架線保護と架線への接触を防ぐためのガードが設けられています。
西側の階段は直線です。
構成材が少なく裏側がよく見えるので、少々華奢な印象を受けます。
かなり不審な行動ではありますが、人の往来のないところを見計らって階段の隙間から線路側を覗き込むと、めくるめく古レールの世界が堪能できます。
主材、水平材、斜材の全てが古レールで構成されています。
最後にレールに銘をみつけたので。
UNION 07 工
と刻印されています。
古レールには詳しくないので色々と調べてみましたが、どうやらドイツのウニオン社製のレールで1907年製造、「工」マークは官設鉄道による発注であることを示すもののようです。
レールの製造年から数えると既に100年を超える時代を歩んできたこの橋が、末永く茅野の人々に利用され続けることを願って止みません。
場所はこちら。