不思議なきのこたち
本当に、「気が付いたら」としか言い様のないうちに、キノコの魅力に完全にやられていた。自然物として、これほどまでに愉快な造形が他にあるだろうか?
その全貌が今もって解明されていない、そして、人間一人殺めるのもたやすい事、と言わんばかりの猛毒を有する仲間が数多く存在するというユーモラスな姿からかけ離れた性質も、彼らの妖しげな魅力を増大させている。
最近のキノコ狩りブームで、キノコ愛好家はかなり増えている様だ。実際、私が山に入りキノコの写真を撮影している傍らで、かたっばしからキノコを摘んでビニール袋に収めるご婦人を何度も見かけている。そうした人たちと私の決定的な違いは、彼らがキノコを「採る」のを目的にしているのに対して、私はあくまで「撮る」のが目的という事だろう。
その特性から、自ら採取したきのこを食べるという行為には、常に危険が付きまとう。毎年シーズンになると必ず一度は新聞にキノコ食中毒の話題が登場する事からも、それは明らかだ。しかし、私はまだ山で出会ったキノコの種類を同定する事ができない。いや、はじめからそのキノコがどんな品種なのかという事に対する興味自体が少ないのだ。だから何時まで経っても覚えられない。そんな人間が山でへらへらとキノコを採ってきて、それを食べるなんてとんでもない事だ。しかし、撮ってきてデスクトップで眺める分には命を脅かされる心配はゼロだ。つまりそういう事なのだ(笑)。
花にしても同じ事が言えるのだが、基本的に私は植物やキノコの品種を調べる事に、あまり興味が無い。むしろ、ただ単純に形の面白さに惹かれるのだ。
それゆえ、このページに取り上げたキノコたちにも、品種名をはじめ一切のキャプションは省略している。キノコ狩りの参考には全くならないので、その点はご承知おき頂きたい。
という訳で、山中でひっそりと、しかし妖しい姿をたたえるキノコたちの表情をお楽しみ頂ければ幸いである。