非常に繊細な造形の火の見櫓は、市販のキットでもかなり工作難度の高いものである。しかし、そんな火の見櫓をオールハンドメイドで作成された方がいらっしゃる。
Twitterで、江戸東京たてもの園に保存されている上野消防署(旧下谷消防署)望楼をモデルに作成された模型の写真を見つけた私は、いてもたってもいられず、失礼を顧みずに製作者の方に連絡を取り、実物を拝見する機会を作っていただいた。
製作者のタカツ様(@sakatuca)は、情景模型を多数作成されているのだが、上野消防署(旧下谷消防署)の模型作成にあたっては、現存しない部分などの構造について当サイトを参照頂いたとの事で大変うれしく思う。
実際に作成された模型を撮影させて頂いたので、ここではリベット一つ一つや屋根板一枚一枚、高欄の装飾を丁寧に全て手作業で造作され、細やかに再現されたディテールを是非御覧頂きたい。
なお、実物の櫓については、当サイト「文化財の火の見櫓」の「上野消防署(旧下谷消防署)望楼上部」をご参照頂きたい。
屋根。避雷針から反りのついた屋根、銅板葺きの屋根が非常によく再現されている。
避雷針と方位標。細かな切り抜き文字はまさに職人技。
望楼部分。外壁、高欄も実物と見紛うほどの細かな仕上がり。良く見えないが、室内には執務机も置かれている。(後半制作ツイート参照)
半鐘。乳の部分まで忠実に再現されている。主材のリベットも一つずつ打たれたもの。気の遠くなる作業だ。
高欄。上部の円形の装飾はパイプを輪切りにしたもの、S字の装飾は専用治具で一本ずつ曲げ加工されたもの。
上部踊り場。この部分は江戸東京たてもの園に保存されている実物では失われているので、写真などから製作者のタカツ様がアレンジした部分。こうした部分の構造の設計に当サイトを参照頂いたとのこと。
踊り場下部。この部分も現存しないため実物からアレンジして作成されたもの。斜材やリング式のバックルなど、非常に細かい部分も見事に組み上げられている。
塗装する前の状態です。
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
主にプラ板と真鍮線、真鍮板で製作してます。
時間あれば各工程簡単に載せていこうと思います。 pic.twitter.com/pZKZ4h8R7L
作図
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
東京たてもの園に移築されている実物と説明看板の図面から作図してます。
脚の部分は組み方の詳細がわからないので、現存時の写真や別の火の見櫓を参考にそれっぽく設計してます。
恐らくは大きく違わないはず。
作図はCADで描いた方が早いのですが、後々使い勝手がいいのでイラストレターにて pic.twitter.com/v70P1lbdig
"骨組みリベット打ち"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
細谷さんのご好意で頂きましたヒートペンにて、リベット打ち。
頭のサイズは0.75mmにて。
6000発打った辺りで数えるのをやめました。
骨組みは0.3mmのプラ板を折ったり切ったり貼り合わせたりして制作してます。 pic.twitter.com/SVTZZoiGUr
"形鋼材工作"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
0.3mmのプラ板に溝を掘ってI鋼やL鋼を製作
その後前述の支柱に組み込む作業。
楽しい作業 pic.twitter.com/szGCIDmB5X
"骨組みの仮組"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
前述の鋼材関係を組んで来ます。
三角、六角形、円形、四角形と複数の形状を駆使した構造美です。 pic.twitter.com/0CC42AuJt3
"手摺の製作"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
支柱の交点を作図して0.2mmの真鍮線用の穴を開けます。
装飾部は真鍮板を細く切り出して、専用の定規を製作の上曲げて製作。
丸い装飾部はプラパイプを薄くスライス。 pic.twitter.com/AZyrz2QDcI
"建屋と屋根の製作" pic.twitter.com/ZMwo6yR7QP
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
"屋根床板の製作"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
屋根は前述の通り戦前のイメージで銅板が緑青吹く前にしようと思ってましたが、この段階でスケール微妙に違うのが発覚し、緑青吹いた屋根に進路変更。
その為プラペーパーで銅板一文字葺き
床板貼りも行います。
床板は貼りパターンわからなかったので私好みの割付にしちゃいました。 pic.twitter.com/RHl5M52bfb
"床板と建屋の塗装"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
建屋の中に昇降口と小さな机を設置してますが、完成したらほぼ見えない。
家具自信作なのに…
建屋自体の塗装は、床板と同じ塗装を施したあと、剥離剤塗布のしてペンキが剥がれた雰囲気にしてます。 pic.twitter.com/V8SSwcUgoB
"緑青の塗装"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
建屋以下とトーン合わせるためにひたすら色調補正。
彩度落としから始めて明度落とし。
作業中は効果が無いように思えるけど、写真で見比べると差が歴然!
写真の1枚目が完了状態で順に時系列になってます。 pic.twitter.com/NU8M2ZuVwI
"骨組みの塗装"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
一度錆びの状態の塗装をし、剥離剤塗布の上仕上げ塗装。
大きな剥がれにならないよう気を使って。 pic.twitter.com/Vy7AynagGC
"完成"
— タカツ (@sakatuca) June 13, 2019
自宅撮影
野外撮影
白黒バージョン pic.twitter.com/ApaOhNqcag
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