火の見櫓図鑑

Home > 火の見櫓資料室 > 文化財の火の見櫓 > 上野消防署(旧下谷消防署)望楼上部

Facebook Twitter LINE Pin it

上野消防署(旧下谷消防署)望楼上部

概要

 東京の北の玄関口、上野駅の東方約300m、下谷地区とよばれる旧東京都・東京市下谷区(1947(昭和22)年に浅草区と合併し台東区に変更)の防災拠点である下谷警察署(現上野消防署)に建造された火の見櫓。
建造は1925(大正14)年、建造当時の高さは約23.6m、三脚四層式外廊型の櫓であった。

上野消防署の望楼として1970(昭和45)年まで使用されたが、老朽化に伴い1977(昭和52)年に解体された。その後、武蔵野郷土館を前身とする「江戸東京たてもの園」に望楼上部7mほどの部分が保存され、現在に至っている。

なお、この櫓をフルスクラッチの模型で精巧に再現された方に模型の実物を見せて頂いた。これについては、当サイト「火の見櫓の模型」の「フルスクラッチモデル」をご参照頂きたい。

フルスクラッチモデル

特徴

現在上野消防署(旧下谷消防署)望楼上部は、東ゾーンの屋外展示スペースに展示されている。

屋根部分。頂部には避雷針と方位標が設けられている。屋根は反りのついた円錐形で、銅板葺き。

避雷針部分。"N,S,W,E"の切文字の方位標と、カールした装飾がみられる。避雷針の根本部分は球形に装飾されている。

方位標を拡大して。"N,S,W,E"の切文字は避雷針から水平に伸びる支柱に取り付けられているほか、斜め上方にも柱が伸びている。

屋根を拡大して。反りのついた円錐形の屋根には銅板が一枚一枚丁寧に葺かれている。緑青が浮いている。半鐘は軒先に吊るされている。

主材。建造時の全高が23.6mと比較的高層であったことからか、主材はかなり太く、L字型の等辺山形鋼を二材つなぎ合わせてT字状とし、Tの上辺部分は平鋼を当て、各材をリベットで留めている。リベットは千鳥状にかなり密に埋められており、かなりの強度を確保しているものと思われる。

望楼の高欄部。見張台は円形で、手摺は角型鋼管を円形に曲げ加工したもの。手摺直下には円形の、水平材を一本介してその下にはS字状の装飾が施されている。垂直材と装飾の接合は部材同士の溶接だけでなく、丸鋼で両材を囲うように曲げ加工した金具を用いている。

望楼下部。直線的な方杖が渡された一節目のプレート部までしか保存されていないため、下部構造は現在ではかつての写真や図面からしか窺い知ることはできない。また、残念なことに全周をフェンスで囲まれているため、細かい部分の観察が非常に困難である。

説明看板。望楼の概要と当時の図面、保存された望楼上部の図面が記されている。なお、本項概要もこの説明看板を参考とした。

説明看板の図面部分の拡大。現役当時は三か所の踊り場を有する四層構造であったことがよくわかる。

かつて望楼が立っていた上野消防署には、この望楼をイメージしたレリーフが飾られている。撤去されてもなお地元の方に愛されている事がうかがわれる。

特徴的な望楼部分のレリーフ。よくイメージが再現されている。

レリーフの説明看板。1985(昭和60)年3月に設置されたものらしい。