松重閘門
高速道路や片側三車線の幹線道路が交錯する名古屋市街の只中に、その塔は突如として現れる。
建設された当時は、屹立する四本の塔がきっと遠くからでも臨めたのだろうが、今となっては周囲を高層建築物に取り囲まれ、窮屈そうに佇んでいる。
市内を南北に貫く堀川と、名古屋港へと繋がる中川運河との間にある高低差を埋めて水運を実現するために、「閘門(こうもん)」と呼ばれるこの施設は造られた。
今であれば味気ない鉄柱がその役割を果たす事になるのだろうが、ここではヨーロッパを思い起こさせる優雅な三角屋根がその役目を負っていた。
水門の間は埋め立てられ、既に水運用としての役割は終えているが、実用施設にも優美なデザインが活きていた時代が、瞼を閉じれば思い浮かべられるように感じられた。