何故か火の見櫓の屋根には、装飾が施されている事が多い。避雷針や風向計、方位針のように必要があって設けられたというものだけではなく、蕨手などは非常に多く見ることができる。
発注者の意向なのか設計者の遊び心かはわからないが、きめ細やかに施された装飾こそが、火の見櫓を単なる消防施設ではなく、町のシンボルたらしめる役割を果たしているような気がしてならない。
避雷針
棒が一本延びるだけの極めてシンプルなもの。蕨手もなく、装飾的要素は避雷針と軒の反りだけ。
(愛知県東浦町)
矢尻状の先端部と、蝶の口吻のような基部の装飾が、四隅にあしらわれた蕨手と共に細やかな印象を与えている。
(長野県小海町)
避雷針の先端が枝分かれしているもの。
このタイプはよく見かけるが、何か理由があるのだろうか?
(長野県富士見町)
こちらも先端が分かれているタイプ。更に「く」の字状の装飾が与えられ、幾何学的なデザインに仕上げられている。非常に繊細な印象だ。
(長野県南牧村)
風向計
矢羽をモチーフにしているものの、矢尻がない簡素なデザイン。
(山梨県市川三郷町)
矢尻と矢羽がデザインされたオーソドックスなもの。
(神奈川県相模原市)
矢尻の形状が丸型になっている。何だか可愛らしい印象。
(山梨県上野原市)
火の見梯子に風向計が取り付けられた例。
(長野県富士見町)
紙飛行機のような三角錘状のオブジェクト。
(山梨県大月市)
矢羽の部分に、消防団の部名が打ち抜きになっている。
(山梨県富士河口湖町)
方位標
東西南北の切り抜き文字をあしらったもの。
下からも視認しやすいように文字には仰角がつけられており配慮が細かい。
(愛知県豊田市)
東西南北の打ち抜き文字をあしらったもの。ひげと合わせて火消しの纏をイメージさせる。
(東京都調布市)
東西南北の打ち抜き文字をあしらったもの。文字は垂直に取り付けられているので、直下からの視認性にはやや劣る。
(岡山県新庄村)
東西南北の打ち抜き文字をあしらったもの。文字はやや下方に向けられている。屋根はなく複雑なねじりの入った支柱や屋根飾りと一体化したデザインが特徴的。
(愛知県岡崎市)
隅棟
隅棟の梁がそのまま突き出したもの。控えめなデザイン。
(山梨県北杜市)
蕨手になっている。細い鉄棒を曲げ加工しているようだ。
(長野県富士見町)
長く突き出た蕨手。先端までカールしており手間を掛けている事が窺える。
(山梨県南アルプス市)
幅広の舌状の板が張り出している。
(福島県本宮市)