火の見櫓の外見的特長は、大きく分けて四種類に分類できる。まずは鋼材・木材などを用いて建造された櫓で、一つが見張台(望楼)を備えた櫓型、もう一つは高い梯子の先に半鐘を備えた梯子型、そして一本足の柱に半鐘を吊るした柱型である。これら鋼製の櫓とは趣を異にするが、東北地方では、木造の消防詰所の屋根上に望楼を設けた屯所型の火の見櫓が見られる。
建設される場所や予算など様々な要因で火の見櫓の形態、規模は決められているものと思われ、そうした背景を推測しながら観察するのも面白い。
柱型(半鐘台など)
鉄柱に簡易な梯子を付けたもの。高さがあまりないので、二段くらい昇ればすぐに半鐘が叩ける。
(山梨県北杜市)
電柱のようなコンクリート柱を用いており、屋根付きの立派な見張台も設けられている。
梯子は電柱のような棒状のものではなく本格的なものが掛けられている。
(山形県真室川町)
鉄道の架線柱のような鉄柱。しかしながら、一方の桁は筋交いを斜めではなく水平にとっており、梯子を兼用させているあたりは、火の見櫓ならでは。
(山梨県北杜市)
梯子型(火の見梯子)
鋼管を組んだオーソドックスな梯子型。こうした形状のものの中では、写真の櫓は高さがある。
(山梨県北杜市)
上の写真のものに比べて丈が低いタイプ。梯子型では半鐘部分にだけ屋根が掛けられているものをよく見る。
(長野県富士見町)
櫓型(火の見櫓)
三本脚
等辺山形鋼を直線的に組んだもの。見上げると三角形を成す横桁がよく目立つ。
(神奈川県相模原市)
高層の櫓には珍しく、脚に鋼管を用いたもの。線が細く、少々心許なく見える。
(群馬県安中市)
等辺山形鋼を組んだ櫓としては、四本脚のものに類似しており、そつのないデザイン。
(長野県富士見町)
やや桁間が狭いタイプ。三本脚ではどうしても脚の内部の空間が狭くなるため、梯子の昇降は少しやりにくそう。
(岐阜県揖斐川町)
鋼管を三本建てて、うち一方の桁を梯子状に組み、そのまま梯子を兼ねさせている。梯子型の発展形。
(長野県富士見町)
四本脚
大半の人が、火の見櫓というとこのようなデザインを思い浮かべるだろう、という典型的なデザイン。
(山梨県笛吹市)
桁間が広いタイプ。筋交いがX字型ではなくV字型に組まれている。
(秋田県鹿角市)
上層は一般的な組み方だが、下層が方形に嵩上げされたような形状。
下層に倉庫などが設けられている場合によく見られる。
(山梨県北杜市)
全体を太目のアングルで組んだタイプ。比較的新しい時期の建造と見られ、装飾的要素は少ない。
(山梨県韮崎市)
太い鋼管と波板の屋根を持つ。素材の選択が現代的で実用本位。
(山梨県韮崎市)
送電鉄塔を流用したもの。火の見櫓と送電鉄塔はトラス構造などに相違点が多く、このように送電鉄塔を流用した例は少ない。
(山梨県北杜市)
屯所型
街中に建つ消防屯所。切妻屋根の上に望楼が突き出るように建てられている。櫓型のように、直接ホースを干す事ができないので、ホース干し用の櫓が併設されている。
(青森県黒石市)
大きな望楼が屋根の中央にどっしりと構えている。下層は一階が倉庫、二階が詰所というのが屯所の基本的なスタイル。
(青森県黒石市)
切妻の母屋に望楼を載せたタイプ。
(青森県つがる市)