災害時に半鐘を鳴らす方法には決まりがあり、消防法施行規則によって打鐘方法が規定されている。火の見櫓にはそれを一覧表にした信号表が取り付けられている事が多い。
打鐘するにあたって必要となる表なので、見張台など半鐘の傍に設置されるのが理に適っていると思うのだが、何故か櫓の基部に掲示されている例が多いように感じられる。
屋外に常時設置されるものなので、琺瑯など耐環境性を備えた素材で造られており、また規格物として量産をされている。
しかしながら、細かく観察してみると製造された時期や製造者などにより、色々と違いが見られる。
信号表
記載される信号種別が少ないタイプ。字体も旧字体で、年代としてはかなり古い物になるのではないだろうか。
(群馬県安中市)
一つ前のものと似たデザインだが、記載されている信号の種類が一つ多く、「林野火災又ハ水災」が追加されている。
(長野県山ノ内町)
消防信号の他に分団名を追記できるスペースが設けられている。
分団名の部分は右書きになっており、かなり古いものと思われる。
(山形県上山市)
消防信号を赤地、水防信号を青地で併記したもの。表示する信号の種類が多いからか、横長型となっている。
(山梨県南アルプス市)
山林火災信号を記載したもので、地色は全面赤色。見出しは右書きになっているので、年代は古そう。
(長野県松本市)
打鐘信号とサイレン信号を併記したタイプ。打鐘信号部分の地色は赤でサイレン信号の地色は青に塗り分けられている。「愛郷火の用心」の標語も記されている。
(静岡県川根本町)
よく見かけるデザインの信号表だが、制作時期などで細部が微妙に異なる。
このタイプは、赤地見出しや種別欄などの「信号」、「応援」、「演習」という文字が旧字体になっている。
(長野県富士見町)
前記と似たデザインだが、下部にポンプ店の広告が掲載されている。
(山梨県北杜市)
デザイン的には二つ前のものと同じだが、赤地見出しの「信号」は新字体になっている。
しかし何故か種別欄などそれ以外の部分は旧字体のままで、一枚の看板に二種類の表記が存在する。
(長野県富士見町)
「信号」の表記は全て新字体となったが、「応援」、「演習」は旧字体のまま。
恐らく全て同じ製造元の手によるものと思うが、微妙な旧字と新字の混在がどうして発生したのか非常に興味深い。
(山梨県北杜市)
基本デザインは従来のものを踏襲しているが、全て新字体で、書体も筆文字のようなものから丸ゴシックに変更された現代的なタイプ。
琺瑯ではなくプリントされているようで、質感は上のものに比べて劣る。
(長野県小海町)
既製品ではなく白無地の鉄板に手書きで信号表を記述したタイプ。
掲載されている信号の種類も少なく簡易なもの。
(山形県山形市)
コンクリート柱に巻きつけるように取り付けられたタイプ。
掲載されている信号の種類は「火災」と「訓練」の二つだけ。
(神奈川県横浜市)
鉄板に信号が切り抜きで表現されている。
青ペンキが厚く塗り重ねられているので今となっては用を成さないが、かつては文字が刻まれるなり書かれるなりしていたのだろうか。
(愛知県愛西市)
こちらも信号が切り抜きで表現されたタイプ。
大分退色してしまっているが、かろうじて信号の種別は判読できる。
(山形県村山市)