Canon T60
その存在だけはかなり以前から知っていたのだけれども、なかなか手が出なかったのが、このカメラだ。
日本国内でFDマウントのボディがほぼ絶滅した頃、このT60は海外向けに発売されている。日本ほどAFカメラに対する需要が伸びていなかった海外で、旧いFDマウントのレンズを利用できる新しいボディが必要とされたゆえの措置だったらしい。
とは言ってもこのカメラ、純然たるキヤノンのカメラという訳ではない。私自身も伝聞なので正確ではないのだけれども、某メーカーからのOEMらしい。良く見れば形の似ている兄弟機が、他の大手カメラメーカーからも入門用のMF一眼としてOEM販売されているので、勘の良い方なら気付かれる事だろう。そう、あのメーカーである。
なぜこのカメラを入手する気になったのかといえば、それはもう半ばコレクション、という事になるのだと思う。このコンテンツのトップページをご覧頂ければ一目瞭然なのだけれども、私はキヤノンのTシリーズに大変愛着を感じている。この機種を入手するまでにシリーズモデル5機種中3機種を所有しているとなると、このモデルにも食指が動いてしまうのは至極当然の振る舞いではないだうか? たとえ他のラインナップとはデザイン・機能の面で全く通じる部分がなく、「EOSと名づけるのは憚られるからTを名乗った」という程度の位置付けであったとしても。
しかしながら、廉価なOEM機で各部の作り込みがアマいので、機能の面では最初からあまり期待はしていなかったのだが、実際に撮影に持ち出して見ると予想に反して使い勝手はなかなか良好だった。今まで絞り優先AEをあまり使用したことがなかった分、その点について若干の違和感があったものの、ボディは軽量・コンパクトで持ち歩くのに全く負担を感じなかった。手動巻き上げという点も、甲高いワインダーの動作音が耳障りなT50やT70に比べると大きな利点だ。
問題点を挙げるとするなら、ミラーショックの大きさや、そのボディの軽さ故に大型のレンズではバランスが取り辛い事だろうか。鏡胴の大きい28-85mmや望遠系のレンズを付けるには、本体自体が少々貧弱なのだ。やはりこういう手軽なカメラには、50mmや35-70mmと言った小型軽量のレンズの方がバランスが取れている。
軽めのレンズを付けっ放しにして、カバンに無造作に放り込んでおく。そんな使い方がよく似合うカメラである。